「不妊は女性の問題」というイメージは、医学的には正しくありません。WHOの調査によれば、不妊原因は男性側のみ約24%、女性側のみ約41%、両方が約24%、原因不明が約11%。つまり不妊の約半数に男性側の原因が関わっています。本記事では男性不妊について整理します。
男性不妊の主な原因
1. 造精機能障害(約80%)
精子の数・運動率・形態に問題があるタイプ。男性不妊の8割を占めます。
- 無精子症:精液中に精子がない
- 乏精子症:精子数が少ない(1500万/mL未満)
- 精子無力症:運動率が低い(前進運動率32%未満)
- 奇形精子症:正常形態の精子が少ない
2. 精路通過障害
精子は作られているが、射精時に外に出てこない状態。精管閉塞・先天性精管欠損などが原因。
3. 性機能障害
ED・射精障害により、妊娠に至らないケース。性行為自体が困難な状況。
原因となる要因
- 精索静脈瘤:陰嚢内の静脈が拡張して精巣温度が上昇(男性不妊の30〜40%)
- 染色体異常:先天的な要因
- ホルモン異常:テストステロン・FSH・LH等の異常
- 感染症:流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)の睾丸炎など
- 放射線・化学療法:治療歴がある場合
- 生活習慣:喫煙・過度な飲酒・肥満
- 環境要因:化学物質・高温環境
男性不妊の検査
精液検査
男性不妊検査の基本。3〜7日の禁欲後にマスターベーションで採取し、以下を測定します。
- 精液量(1.5mL以上)
- 精子濃度(1500万/mL以上)
- 運動率(40%以上)
- 前進運動率(32%以上)
- 正常形態率(4%以上)
WHOマニュアル2010年版の基準。基準値は変動性が大きいため、複数回検査が推奨されます。
その他の検査
- ホルモン検査(血液)
- 染色体検査・遺伝子検査
- 陰嚢超音波(精索静脈瘤の確認)
- 精巣生検(無精子症の場合)
精子の質を改善する生活習慣
1. 禁煙
喫煙は精子の数・運動率を低下させ、DNAダメージを増やします。妊活中は完全禁煙を。
2. 適度な体重管理
肥満はテストステロン低下・精子質低下に直結。BMI 25未満を目安に。
3. 禁欲しすぎない
長期間の禁欲は精子の質を下げます。妊活中は3〜4日に1回程度の頻度が推奨。
4. 高温環境を避ける
- 長時間のサウナ・熱い風呂を控える
- 長時間のノートPCを膝の上に置く作業を控える
- ぴったりした下着より、ゆとりのある下着を
- 長時間の自転車・バイクは避ける
精巣は体温より1〜2度低い環境が理想です。
5. 栄養管理
- 亜鉛(牡蠣・牛肉・ナッツ)
- 葉酸(緑黄色野菜)
- ビタミンE(アーモンド・植物油)
- ビタミンC(柑橘類)
- セレン(魚介類)
- コエンザイムQ10
6. ストレス管理
慢性的ストレスはホルモンバランスを乱します。適度な運動・睡眠・趣味でリフレッシュ。
7. 適度な飲酒
過度のアルコールはテストステロン・精子質を低下させます。週に2〜3日の休肝日を。
医療的アプローチ
1. 薬物療法
ホルモン療法(FSH注射・HCG注射)、サプリメント(ビタミン・抗酸化剤)など。
2. 手術療法
精索静脈瘤手術、精路再建術など。精索静脈瘤は手術で精子質改善が見込めるケースが多いです。
3. 生殖補助医療
- 人工授精(AIH):軽度の男性不妊
- 体外受精(IVF):中等度の不妊
- 顕微授精(ICSI):重度の不妊・少数精子
- TESE(精巣内精子採取術):無精子症
受診のタイミング
パートナーと避妊なしの性生活を1年以上続けても妊娠しない場合、不妊外来を受診しましょう。女性の年齢が35歳以上の場合、半年で受診を検討。男女両方の検査が基本です。
受診先
- 泌尿器科(男性不妊外来があれば)
- 生殖医療専門クリニック
- 男性不妊専門医のいる病院
男性不妊の医学情報は日本泌尿器科学会のサイトでも確認できます。
※本記事は医療アドバイスではありません。不妊検査・治療は専門医にご相談ください。